僕が小学6年生の頃の話。
その時僕は頭を抱えていた。
夏休みの宿題についてだ。
そして、ヒラメかなきゃ良いものをヒラメいてしまった。
チッタのヒラメキは、母や担任を巻き込んだ。
夏休みの宿題
僕の通っていた学校の夏休みの宿題は、漢字、算数ドリル等のやらなければいけない「強制型」の物と、図工、読書感想などからひとつ選ぶ、「選択型」の2種類の宿題が出ていた。
この「選択型」の宿題を何にするかで悩んでいた。
前の年の僕は「図工工作」を選んだ。
父の愛飲する焼酎の、4リットルサイズのペットボトルを使った貯金箱を作り上げた。
「デカすぎる」「絶対貯まらないよ」
などと、周りからはかなりの高評価であった。
そこで承認欲求が満たされた僕は、今年はもっと凄い物を作り上げようと考えたのだ。
「この中から選びなさい」というプリントに目を通す。
どれもありきたり過ぎて面白味がない。
こんなんじゃ、観客は沸かせられない。
もっと独創的で、インパクトがあるやつがいい!!
独創的
僕にしか作れない物はなんだろう?
そんな事を考え続けた。
「僕と周りの違い」
これを考えた時、「家庭の違い」が思い浮かんだ。
父親が働いていないってのはどうだろう?
僕にとって「兄からの暴力や支配」は、物心が付いた頃からの当たり前な日常だった。
しかし、父のアルコール依存からの働かなくなった現状は、進行していく「変化」だった。
その頃の父は、夜な夜な酔っては「ひとり運動会」を繰り広げる日々。
昼間は働きに行くことも無くなった。
僕にとっての「父の変化」は、当時、最もホットな話題であった。
なんとか宿題に繋げられないだろうか?
そう考えた。
今にして思う。
この小学生、頭オカシイ。
再び「プリント」に目を通す。
工作?父のダメさを表現出来るだろうか?
読書、視聴感想文?日頃から父の話は友達にしている。
観察…?
これだ!!
僕は最初、家で飼っていた「猫の観察日記」を付けようとしていた。
しかし、ヤツらの動きを追跡するのは不可能であった為、早々に諦めた。
父ならイケる!!
父の観察なら可能だ!!
しかも、独創的でインパクトも申し分ない!!
その日から「父の観察」が始まった。
案の定というか、父は家で飲んでばかりだった。
それを僕は至近距離から観察する。
「15:00の時点で7杯目か、今日は少しペースが早いな…。」などといったデータを正確に記録する。
父は僕を溺愛していた。
溺愛する息子が昼間から自分の近くに居ることで、父は上機嫌だった。
当の息子の思惑は全く別方向を向いているのだが。
基本的には、父の飲酒量のデータしか集まらなかった。
父は殆ど家にいた。
たまに思い出したかの様に外へ出かけても、職場に顔を出すくらいだった。
父の職場は飲食店だった。
説明は省くが、「元職場」である。
仕事に行った訳じゃない。
閑古鳥の鳴く店内でくっちゃべってるだけだ。
提出。そして呼び出し。
夏休みが終わった。
新学期が始まり、再び学校へ通う日常の始まりに憂鬱になる。
しかし、憂鬱な気分の中に、ちょっとしたワクワクがあることも感じていた。
父に関する大したデータは取れなかったが、「父の観察日記」の出来栄えにはおおむね満足していた。
僕は意気揚々と宿題を提出した。
「どんな反応してくれるだろう…。」
父親が働かずに飲んだくれている家庭。
異質な家庭であることに子供ながらに気付いていた僕は、それを周りに言いふらし、困った顔をされるのが面白かった。
実に困った子供であった。
あまりにも明るく楽しそうに話す僕に、周りの教師たち大人は、あまり問題視していなかった。
今思えば、僕なりの「SOS」だったのかも知れない。
新学期早々に、母の呼び出しを喰らってしまったw
「父の観察日記」の出来栄えが良すぎた為に、担任が問題視してしまったらしい。
担任との面談が終わった母は、それはそれは悲しそうな顔をしていた。
あの時の母の顔は忘れない。
やっちゃったぜ。
しかし、この担任の対応に、僕は不服だった。
母の呼び出し後、担任が「父の観察日記」の件に触れることはなかった。
もっと触れろよ!!
僕はこの「宿題」に自信を持っていた。
独創性、出来栄え。
珍しくベストを尽くして作り上げた「父の観察日記」は最高の逸品だと思っていた。
「違うんだよ…。そんな反応が欲しいんじゃないんだよ…。」
実にメンド臭い子供だ。
その後、「父の観察日記」はどこへ行ったかわからない。
惜しいことをしてしまったと思う。
児童心理学において、あの「父の観察日記」はかなり貴重な文献になったはずだ。
出来る事なら、もう一度、あの文献に目を通したいと思う今日この頃…。
これ面白いなw
そんな事やってたんだ。担任としちゃ〜いじれないよな〜。職員室では他担任と話してたと思うけど。
話してなかったっけか?まぁいいや。
なかなかトンガってたねw
自分で言うのもアレだけど、小学校の頃は優等生だったと思うのよね。
そんな子が、アルコール依存の問題を抱えた父親の詳細なデータを持って来たわけよ。
「こんな問題ある家庭の子が、なぜ学校では良い子なのだろう?」「逆に、そういう状況下にいるからこそ優等生でいなきゃいけないのだろう」
かなり考察のはかどる文献だと思うけどなぁw
まぁ、教師の仕事ではないかな。
凄いですね!お父様に殴られそうですけど
私の観察日記つけたらほぼ白紙で済みますよ!
真っ白のノートに抜け毛を貼り付けさせていただきます🤗