治験ボランティア

僕は20代半ば頃、「治験ボランティア」に参加していた時期がある。

「治験バイト」とか「入院バイト」なんて呼び方をされてるのを聞いた事もある。

みなさんも1回くらい耳にした事があるのでは?

聞いた事はあるけれど、「本当にあるの?」とか、「自分で参加するのは怖いな…。」と思う人もいるかと思う。

今回は、僕が実際に参加した「治験ボランティア」のお話。

治験ボランティアとは?

治験ボランティアとは?

我々が病院から処方される薬は、「処方」「流通」が出来る様になるまでに、実際に服用し、データを収集し、薬の「有効性」や「安全性」を認めてもらう必要がある。

実際に薬を服用し、データ収集の協力をするのが「治験ボランティア」なわけだ。

ドラッグストアなんかで買える「市販薬」も似た様なモノなんだと思うけど、その辺は僕もわからないです。

僕が参加した治験では、病院で処方される薬だけ。

 

治験ボランティアってどんな事をするの?

概要としては、みんなが聞いた事のある「治験バイト」と然程変わりは無いと思う。

  • 治験を行う病院に入院(通院)する。
  • 薬を飲む。
  • 採血などのデータ収集に協力する。
  • 謝礼金を頂く。

こんなところ。

投薬日(その前後)は忙しいけど、投薬日から大体3日目辺りになると暇になる。

「忙しい」とは言っても、実際に忙しいのは「先生」や「看護師さん」達だけ。

僕達ボランティアは、ベッドの上で「されるがまま」に出来るデータ収集されていればいい。

「楽してお金がもらえるバイト」なんて言われてるのは、そんな理由だろう。

どんな薬を飲むの?

みんなが気になるのは「どんな薬を飲むのよ?」って事かと思う。

「出来たばかりの薬でしょ?」「新薬とか、副作用が怖くない?」なんて聞かれた事がある。

「治験=新薬の開発」みたいなイメージの事を聞かれるんだけど、実はそんな事はない。

飲む薬は、大きく分けて2種がある。

  • まだ流通していない新薬
  • 既に流通している薬

この2種がある。

 

  • 新薬

まだ流通されていない薬。

流通に向けて、これからデータを収集する薬。

動物実験では「有効性」や「安全性」を認められた薬らしい。

僕は10回くらい治験に参加したのだけど、新薬の治験は1回だけだった。

  • 既に流通している薬

既に病院から「処方」「流通」している薬でも、治験を行う事がある。

「なんで既に流通してる薬を、もう1度データ収集する必要があるの?」

理由はふたつ。(僕が知っている限り)

  1. 1錠あたりの量を変える為。
  2. 別の用途で処方する為。

1. 処方される薬には、「同じ薬」でも、1錠あたりの量が違う薬がある。

「同じ薬」でも、「1錠の量」が違えば、別に治験を行い、偉い人達から認可される必要がある。

例えば「ハルシオン」という睡眠導入剤には「0.125mg錠剤」と「0.25mg錠剤」があるらしい。

これらは「0.125mg錠剤」と「0.25mg錠剤」で、それぞれ別に治験を行い、それぞれが認可されたから処方する事が許されている。

仮に「ハルシオン4mg錠剤」という薬を、新たに流通させたい場合、「ハルシオン4mg錠剤」の治験を行い、偉い人達から認可を得る必要がある。

2.  別の用途で処方する為。

仮に、既に流通している「咳止めの薬」の「セキトメール」という薬があるとしよう。

「咳止め」といっても、直接「咳を止めるだけ」の薬は無い。

薬には必ず「副作用」がある。

「セキトメール」には「胃が荒れる」とか「胸焼けがする」とか「都合の悪い副作用」がある。

そして、「セキトメール」には「解熱」という「都合の良い副作用」がある事もわかってきた。

だけど、「セキトメールは解熱剤としても優秀じゃん!解熱剤としても処方しようぜ!」と言って、処方する事は出来ない。

「咳止め薬として」の治験で認可された薬は、「咳止め薬として」しか処方してはいけないんだ。

「セキトメール」を「解熱剤」として処方したい場合、「解熱剤」としての治験を行い、認可を得る必要がある。

こういう「別の用途」での有効性がわかってきた薬は、意外と多いみたい。

 

僕が治験に参加した病院が「そう」なだけかもだけど、「新薬の治験」よりも「既に流通している薬の治験」が圧倒的に多かった。

いくらもらえるの?

「何泊するか」「何回通院するか」で変わってくる。

もしかしたら「薬」によっても差があるのかも。

「23泊、通院2回」という治験に参加した事があるんだけど、交通費込みで「40万に届かなかったくらい」だと記憶している。

これを「高い」と思うか「安い」と思うかは意見が別れると思う。

因みに「23泊」なんて長い治験は、かなりレア。

「14泊」なんて治験を見かけると「おぉ、長いのがあるな。」って感覚だった。

治験ボランティアの参加

僕が20代半ばの頃。

僕はお金が無かった。

その頃は母にお金を出すのをやめていた。

では、なぜお金が無かったのか?

単純に、あんまり働いてなかったからだw

仕事の日数は、月によってマチマチだけど、平均して月に15日前後。

月に20日働いた月は「おー、今月は働いたなぁ。」って感じだった。

そんな感じで、「お金は無い」が「時間は持て余して」いた。

 

そんな時、いつもの友人から「チッタ、治験って興味ない?」との話が来た。

友人は既に何回か治験ボランティアに参加していて、僕にも興味があれば病院を紹介してくれるとのことだ。

話を聞いてみると、

  • 「忙しい日」意外なら、本を読んだりゲームしたりと、割と自由に出来る。
  • 入院中は「食費」「光熱費」が浮く。
  • 更には「謝礼金」も貰える。

時間を持て余し、本を読んだりネットを見てれば満足できる僕には好条件だった。

最後に友人は「ある程度の安全性や補償なんかはあるみたいだけど、薬を飲むってのは全くのノーリスクではないから、その辺は自己責任で。」と、念押しした。

僕は、教えてもらったホームページにアクセスして、事前登録を済ませた。

 

登録を済ませ、「参加者ページ」にログインする。

「参加者ページ」には、「治験日程」がズラリと並んでいた。

1192TA

健康診断2/16 × 2/17×   2/18△

入院3/16から3/21  通院4/2

BMI 19から24

入院中禁煙

30歳まで

 

1242BA

健康診断2/26△  2/27 〇 2/28 〇

入院3/6から3/9  入院3/16から3/19

BMI19から24

半年以前より禁煙している人

35歳まで

こんな感じで募集案件がいくつもあった。

この募集案件は、こういう意味。

1192TAという薬の治験があります

健康診断が2/16 2/17 2/18にあります

2/16 2/17は締切ました。2/18は定員まで残りわずかです

3/16から入院して3/21に退院

後日4/2に通院してもらいます

自分の体重を身長(メートル)で2回割った数値が19から24までの人が条件です

喫煙の人でも、入院中の禁煙を守れる人なら受けられます

年齢の上限が30歳までです

 

1242BAという薬の治験があります

健康診断が2/26 2/27 2/28にあります

2/26は定員まで残りわずかです

2/27 2/28 は定員まで余裕があります

入院は2回に分けて行います

3/6から入院して3/9に退院

3/16から入院して3/19に退院

後日の通院はありません

自分の体重を身長(メートル)で2回割った数値が19から24までの人が条件です

非喫煙者が条件です

禁煙した人でも、禁煙期間が半年より短い人は受けられません

年齢の上限が35歳です

僕は当時、タバコを吸っていなかったし、体型の心配もなかった。

年齢も問題無い。

日程だけを見て、都合の良い日程の治験を探す。

 

都合の良い「6泊7日」の治験に申し込んだ。

電話での軽い問診。

持病の有無や、日常的に服用している薬の有無なんかを聞かれた。

最後に、健康診断の注意。

「朝食は抜いて来て下さいねー。」とか、そんな感じの説明を受けて、申し込みは終わった。

健康診断

治験ボランティアってのは、誰でも参加が出来るわけじゃない。

年齢制限がある。

持病があり、日常的に薬を服用している人の参加は難しい。

痩せすぎ、太りすぎで、BMIが基準値内ではない人は参加する事が出来ない。

喫煙についても、「非喫煙者」が条件の治験も多い。

まずは、「参加条件」を満たしているかを調べる為に「健康診断」をするわけだ。

因みに僕は、治験の健康診断を「一次試験」と読んでいる。

健康診断の内容は、職場で受ける健康診断と違いは無かった。

身長体重、尿検査、血圧、採血、心電図、レントゲン、問診。

この辺の検査を受けた。

 

健康診断を終えると、先生からの治験の説明があった。

ここで初めて、「何の薬の治験」なのかを教えてもらえる。

新薬なら、動物実験でのデータなど。

既に流通している薬なら、報告されている副作用など。

説明を受けたあと、改めて「参加する意思」を聞かれる。

ここで辞退しても、全く問題無い。

説明が終わると、そのまま解散となった。

後日、病院に健康診断の合否を聞く連絡をした。

「一次試験」は問題なく突破。

「今現在の体調」や「入院日程の急な不都合の有無」を聞かれ、問題なければ「入院当日、よろしくお願いします。」となる。

入院当日

僕は再び病院に訪れた。

病院に到着した僕は、受付で「荷物検査」を受ける。

治験には荷物制限がある為だ。

基本的に「薬」と名の付く物は、この時点で病院側に預ける事になる。

パッと思い付くのは「目薬」とか。

「タバコ」や「飲食物」も持ち込む事は出来ない。

ガムや飴といった物も預ける。

これは、正確なデータを収集する為に、カラダに余計なモノを入れない様にする為の処置。

ハンドクリームや化粧水なんかは、入っている「成分」なんかを見てもらい、問題無ければ持ち込める。

備え付けにシャンプーとか歯磨き粉なんか、必要な物は用意してくれてある。

自分で持ち込みたい場合は、同様にチェックを受ける必要がある。

 

荷物検査が終わり、治験が行われる「デイルーム」に通される。

※イメージ写真です。

そこには、僕と同じように入院用の荷物を抱えた人達が待機していた。

しかし、まだ安心は出来ない

入院前に、「二次試験」があるのだ。

「一次試験」に合格した人全員が治験に参加出来るわけじゃないんだ。

治験には厳密なデータが必要で、「必要な人数」も決まっている。

その治験は「10人分」のデータが必要で、集まった人数は20人近く居ただろうか。

ここでもう1度、健康診断をして「より健康な順」に「13人」まで絞りこむ。

基準値をクリアした20名から、「より健康」な「スタメン」を決めるわけだ。

 

なぜ、定員の「10人」ではなく、「13」人なのか?

治験に参加するメンバーは、「健康体」でなくてはならない。

実際に薬を飲むのは、スタメンの「10人」だ。

しかし、トラブルは付き物。

入院の翌日か翌々日に、薬を飲む「投薬日」があるのだけど、そこで「スタメン」が体調を崩さない保証は無い。

体調を崩した「スタメン」の保険に「3人の補欠」を確保しておく。

この「3人」は「待機メンバー」と呼ばれる。

待機メンバー

健康診断後、1時間くらい待機した後に「メンバー発表」が行われた。

まずは、健康な(数値の良い)順に「スタメン」に選ばれた人の名前が呼ばれる。

「スタメン10人」の名前が呼ばれたが、僕が呼ばれる事はなかった。

次に「待機メンバー」の「3人」が呼ばれる。

ここで僕の名前が呼ばれた。

僕のデビュー戦は「待機メンバー」だった。

 

「スタメン」にも「待機メンバー」にも選ばれなかった参加者達。

この参加者達は、ここで帰宅となる。

「なんだよ!折角時間作って来たのに!」となる気持ちもあるだろう。

実際、僕も「待機メンバー」として選ばれた事にガッカリしていた。

しかし、「治験ボランティア」は、あくまで「ボランティア」なんだ。

「目的の為に、自分が協力出来る事があるのならお手伝いします。」という考えでいなくてはいけない。

「13人」選ばれなかった人は、今回は「協力出来る事」が無いんだ。

僕には「待機メンバー」として、協力出来る事があった。

ガッカリしていないで、自分の出来る事をしなくてはいけない。

「謝礼金」なんてモノがもらえる為に、こういう気持ちを忘れがちになってしまうけど、忘れてはいけない気持ちだと思う。

 

モチロン、病院側も「残念でした。さようなら。」ではない。

ちゃんと「こういう理由で今回は選ばれませんでした。今後も参加の意思があれば、よろしくお願いします。」と、説明してくれるし、別の「治験」の紹介もしてくれる。

更には、「一次試験」の日もなんだけど、3000円の「交通費」も支給してくれていた。

 

とにかく僕は「待機メンバー」として選ばれた。

入院日当日から、少なくとも「投薬日」までは「スタメン」と同じ入院生活をする事になった。

休薬期間

入院生活の話の前に、「休薬期間」の話をしよう。

休薬期間とは、「治験」に参加したボランティアが、「次の治験」まで間を空けなくてはいけない期間の事。

その期間は4ヶ月。

つまり、治験は連続して参加する事は出来ない。

1年に「3回」、上手い事日にちが合えば「4回」しか参加する事が出来ない。

この「4ヶ月の休薬期間中」は、「別の病院での治験」も参加する事は出来ない。

何かの「組合」だかが、「この人は〇〇に治験参加しましたよー。」って管理してるらしく、そういうズルみたいな事は出来ない。

これは「治験ボランティア」の人達のカラダに負担をかけないようにする為の処置。

「その通りの理由」なんだけど、「休薬期間」を設けないと、治験に参加しまくって薬漬けになる「ボランティア」が出てくるからだと僕は思ってる。

「休薬期間」ってモノが無ければ、僕もバイトを辞めて治験に参加しまくってただろうしねw

 

しかし、この「休薬期間」という縛りがあると、「待機メンバー」は少し「旨味」が出てくる。(本来は美味しいとか言っちゃいけないんだけどね。)

「休薬期間」は、治験で「投薬(薬を飲む)」を受けた人しか対象にならない。

「待機メンバー」は、「スタメン」の体調に問題が無い時は「投薬」を受けない。

つまり、「待機メンバー」は、ほとんどの場合、「投薬」を受けずに帰宅する。

投薬を受けなかった待機メンバーは、休薬期間を空ける必要が無いんだ。

投薬を受けずに帰宅した待機メンバーは、すぐに別の治験に参加する事が出来る。

では、なぜ「美味しい」のか?

待機メンバーにも満額では無いが、「待機メンバーとして」の「謝礼金」が出るからだ。

待機メンバーは投薬する事無く帰宅した場合、2〜3日程度の入院後、「待機メンバーとしての謝礼金」をもらい、すぐに次の治験への参加申し込みが出来る。

僕が待機メンバーだった時は、2泊3日で「交通費込みで3万円」くらいだったと思う。

初めての治験ボランティア

メッチャしんどかったw

待機メンバーに選ばれた時は、結構ガッカリしていた。

だけど、初日の夜には、帰りたい気持ちでいっぱいだった。

 

何がしんどかったか。

治験参加中は、「ひとりになる」事が、ほぼ出来ない。

ひとりになれるのは、トイレの個室とシャワーくらいだろう。

ベッドルームは、モチロン大部屋。

1メートル足らずの感覚でベッドが並ぶ。

仕切りのカーテンを閉める事は出来ない。

デイルームに出てみても、他の参加者が居たり、近くにはナースステーションがある為、誰かしらが居る。

何より、窓を開けちゃいけないのがしんどかった。

閉鎖された空間で、初めて会う「他人」と過ごすのは、当時の僕にはキツかった。

「引きこもり体質」な僕だったけど、「窓を開けられない」のが、これほどキツいとは思わなかった。

この時点では、「スタメン」にトラブルが発生する事無い様に願うばかりだった。

 

この時点で、帰宅(棄権)する事自体は可能だった。

だけど、途中で放り出す様なマネをすれば、次回以降の「メンバー」に選ばれるのは難しいと思う。

治験で求められる人材は、「健康」である事と、「協力的な姿勢」が大事なんだ。

治験というのは、「正確」で「詳細」なデータが必要。

そんなデータを収集する為には、ちゃんと「ルールを守る」ボランティアが必要。

「途中で放り出す」様なボランティアは、病院側として好ましく無い。

「帰りたいです!」と申し出れば、帰る事も出来ただろう。

だけど、僕はなんとか「2泊3日の入院」を耐え抜いた。

退院

待機メンバーだった僕も、投薬日までの2泊3日はスタメンと同じ入院生活をしていた。

  • 入院初日

病院に集合し、健康診断を受け、参加メンバーの発表、ベッドの割り当て。

これらが終わったのは16:00くらいだったかな。

その後、多分19:00に夕食。

順番にシャワー。

多分23:00に消灯。

他は、なーーーーーんにもする事がない。

テレビ観てようが、漫画読んでようが、携帯イジってようが自由。

僕は漫画を読んでたと思う。

  • 入院2日目

多分7:00起床。

体温チェック、体重測定、血圧測定。

多分8:00朝食。

多分12:00昼食。

昼食前には軽くラジオ体操。

多分19:00夕食。

順番にシャワー。

多分23:00消灯。

消灯前に、翌日の「投薬日」についての説明。

他は、なーーーーーーーーーんにもする事がない。

  • 入院3日 投薬日

多分7:00起床。

「体温、体重、血圧」のチェックは2日目と同じ。

更に「心電図」「採血」「問診」が入る。

多分9:00投薬開始。

「スタメン10人」が、順番に薬を飲んでいく。

最後のひとりの投薬が完了したところで、僕達「待機メンバー」は帰る支度をする。

 

先生「お疲れ様でした。」

本当に疲れたw

待機メンバーとしての謝礼金を受け取り、次の治験の紹介をしてもらった。

今回の治験で、いきなりの長期入院がシンドイ事がわかった。

「3泊4日×2回」という治験があったので、その治験に応募してもらった。

 

2日ぶりの外の世界。

たった「2日ぶり」だったけれど、とても清々しい気分だった。

「初めての治験」は、とてもしんどいモノだった。

その後、紹介してもらった治験に「スタメン」として参加。

「短い治験」を何度かこなすうちに、入院生活にも慣れていった。

2年か3年くらい、治験ボランティアをしていたと思う。

最後の方は、先生方にも顔を覚えてもらえる程の常連になっていた。

「23泊」なんて、とんでもねぇ長さの治験にも参加した。

あれは慣れててもしんどいw

 

もっと「入院生活」の事やらを細かく書きたいんだけど、一旦ここで切ります。

そのうち書くと思うんで、良かったらまた読んで下さい。

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