安息を手に入れた引越し

僕が今住んでいる家に住み始めて、もうすぐ6年になる。

初めて自分で選んだ物件。

トラブルもあった。

だけど、今の家にはとても満足している。

「気に入った物件だから」というのもあるけれど、自分が納得するまで「自分で考え」「自分で選択した」のが大きいと思う。

何より、僕の家族が「知らない」「絶対に来ることがない」安心感がある。

100%安心できて安らげる家に住める事が、これ程ありがたいモノなのだと、今の家に住んで実感した。

ひとり暮らしを始めて。

僕が10代後半の頃、兄と入れ替わりで実家を出る事になった。

初めてのひとり暮らしに期待やワクワクもあったけど、「その部屋」には不満が多かった。

  • 設備や部屋そのものの不満
  • 不動産屋の不満
  • 家族が来る可能性

これらがあった。

  • 設備や部屋そのものの不満

僕が当時住んでいた部屋は、1Kの安アパート。

6畳ほどの部屋に、狭いキッチン、狭いユニットバス。

汚くてすみませんねw

こんな感じの部屋で、安らぎなんてあったモンじゃないw

僕は風呂が好きだし料理も好きだけど、この部屋ではその欲を満たし切れない。

10年くらい住んでいたから、エアコンもぶっ壊れていて使えなかった。

 

この部屋には不満が多かったけど、お金のない僕には「この部屋」に依存するしか手段がなかった。

「嫌だ嫌だ」と不満を言いながらも離れられない「共依存」みたいな関係で、それもまた嫌だった。

  • 不動産屋の不満

僕は不動産屋に対して、心理的に「客」としての態度を取れなかった。

例えば「エアコンの件」はそうだ。

部屋の設備に問題が生じれば、不動産屋に頼んで「どうにかしてもらう」権利がある。

と言うか、そもそも報告する義務がある。

僕は以前の「家賃滞納の件」で不動産屋に連絡を取るのがオックウだった。

詳しくはこの記事をどうぞ。

支払われていない家賃

 

僕がこの部屋を借りてる間に、「この部屋を管理する不動産屋」が2回変わった。

最初の不動産屋には「家賃滞納の件」があったし、2つ目の不動産屋とは根本的にソリが合わなかった。

この「2つ目の不動産屋」は、古い時代の不動産屋って感じで、かなりオウヘイな不動産屋だった。

間違いなく「電話がかかってきていない」のに、「電話にちゃんと出ろ!!」とブチ切れてきたり、不動産屋側の確認ミスで「家賃が振り込まれていない!!」とブチ切れて来たこともあった。

この「お殿様」の様な不動産屋は、おそらく他の住民にも評判が悪かったのだろう。

短い期間で別の不動産屋が管理する事になった。

  • 家族が来る可能性がある

実際に来る事はなかったけど、僕が住んでいる場所を知られていることが問題だった。

僕は家族に会いたくなかった。

部屋のチャイムが鳴る度に「母や兄だったら…。」と、変な怯えがあった。

家族との「接触」が嫌すぎて、電話の着信音や部屋のチャイムの「音そのもの」に恐怖心を持ってしまっていた。

だから、「あの部屋」に住んでいて、本当の安らぎはなかった。

引越しの決意

僕が週5日のフルタイムで働く様になって、金銭的に余裕が出て来た頃。

物欲の少ない僕は、増えていく貯金額を見て考えた。

少し贅沢しても良いんじゃないか?

食うモノには満足出来ていた。

現実的に買える物で、特に欲しい物も見当たらない。

それまで漠然と考えていた「引越し」に目を向けてみる事にした。

 

まだこの段階では「ウインドウショッピング」をしているだけ。

「それなら夢を見ようじゃないか。」と「一戸建て物件」をネットで見ていた。

一戸建て物件を眺めては「実際に住んだらこうしよう」とかって妄想をして楽しんでいた。

 

そんな妄想を楽しんでいた時「安い一戸建て物件は無いのかな?」と思い調べてみる。

あった!!

意外とあるモンだ。

家賃は?…4万!?

その時に住んでいたアパートの家賃は4万5千円だ。

「むしろ今より安いじゃないか!!」

安い一戸建て物件があるとわかった僕は、条件を絞って検索した。

  • 職場との距離
  • 都市ガス
  • 物件内容

これらに絞る。

  • 職場との距離

電車は使わないので、駅から離れていても良い。

職場にさえ近ければ、それで良い。

僕は通勤時間を、最も無駄なモノと考えている。

電車やバスは使いたくない。

自転車で15分。

妥協して20分の距離までしか許さない。

  • 都市ガス

僕は風呂が好きだし料理もする。

ガス代は高め。

ちゃんと調べた事はないけど、プロパンガスは高いと聞く。

その当時に住んでいたアパートは都市ガスだったし、それ以上のガス代は出したくなかった。

  • 物件内容

一戸建てといっても、テラスハウスは論外。

あんなモン、一戸建ての皮を被った集合住宅だ。

どうせなら、「ひとつの敷地」として確立した物件が良い!!

 

これらの条件を入力し、家賃の安い順に見ていった。

1番安い物件にハートを撃ち抜かれた!!

家賃4万!

職場に自転車で15分の距離!

都市ガス!

1DKの広いキッチン!風呂トイレ別!

チョットした庭(敷地)!

そして、外には別に「小屋」があるだと!?

僕は震えた。

こんな好物件が転がっているなんて…。

僕はスグに不動産屋に予約を入れ、この物件が埋まってしまわない事を願った。

物件を見に行こう!

不動産屋の予約当日。

店長さんと打ち合わせをした。

現在住んでいる物件の状況やら、目を付けた物件の他の候補やら。

打ち合わせが済み、僕の担当者さんと物件を周る事になった。

 

この「担当者さん」がまた良い人だった。

ノリが良いのに、「フレンドリー」と「無礼」の線引きがしっかりしている、とても感じの良い人だった。

不動産事情なんかを色々ぶっちゃけてくれて、とても楽しいし勉強になる話も聞けた。

「水回りって怖いんですよ。過去に大きいトラブルを抱えていた物件をお客様に契約してしまって、大問題に発展してしまった事もありまして…。」

「ナルホド、ふむふむ…。僕も気を付けなければ。」などと考えながら物件を見て周った。

不動産屋側で探してくれた数件を見て周ったけど、やはり自分で見つけた最初の物件が気に入った。

 

「僕の気に入った物件」は古い家で、一戸建てというには言葉が過ぎる様な「平家」だった。

作りもなんかチグハグ。

洗面所も無いし、洗濯機置き場は「外の小屋」に設置するモノだった。

そして、この「小屋」がまた気に入った。

なんか、秘密基地っぽい!!

僕は「キャッキャ」はしゃぎながら部屋中を見て周った。

 

そんな僕を、担当者さんはとても不思議そうに見ていた。

担当者さんが言うには、「とても、若い人(つっても30代だけどね)が好む様な物件ではない。」とのこと。

言ってしまえば「あまりモノ物件」。

担当者さんが事前に「この物件」に目を通した時、「今後も借り手は着かないだろうな…。」と思っていたらしい。

チッタ「いやぁ、今日までこの物件が埋まっちゃわないか心配で心配で。」

担当者さん「おそらくチッタさんが契約しなければ、埋まらない物件だと思いますねw」

そんな物件に、僕は大はしゃぎ。

「失礼な言い方ですが、子供の様に目を輝かせて。チッタさん、変わってらっしゃいますねw」なんて言われたw

 

とにかく、この物件が気に入った。

しかし、ひとつだけ懸念事項があった。

風呂場だ。

壁に蛇口がブッ刺さってるだけだった。

シャワーが無かった。

そして、風呂場の蛇口なら、「水とお湯の切り替え」があるじゃない?それが無かった。

本当に「こんな蛇口」がブッ刺さってるだけだった。

「これ、お湯出るの?」

最悪、お湯が出ればシャワーは外付けでナントでもなる。

実際、こうした。

この件は持ち帰りとなり、担当者さんがオーナーに確認を取ってくれる事になった。

後日、担当者さんから連絡が入り、「お湯は出る」と確認が取れたそうだ。

僕はこの物件に決めた。

契約を結び、引越しの手配、新居に新たな設備を購入した。

 

新たな一歩に胸は高鳴る。

しかし、事はスムーズには行かなかった。

水回りは怖いのだ。

トラブル

新居の契約が始まり、引越しまでの間に、僕は準備の為に何度か新居に足を運んだ。

不愉快な点がいくつかあった。

畳にシミがあったり、みんなが大嫌いなゴキさんの死骸が転がってたりした。

「え?クリーニング代払ったはずだけどな…。」

正直、このあたりから、不動産屋やオーナーに対する「疑念」が出ていた。

 

引越しまで少し日数が空いていたんだけど、早めに電気やガスの開通をしておいた。

ガス会社の人と開通の立ち会いの際に確認を取った。

チッタ「この風呂、お湯出るって言ってましたけど、本当に出るんですかね?」

ガス会社「え?出ませんよ?給湯器無いですもん。」

チッタ「はぁ…?」

なんとこの風呂、「浴槽の湯沸かし器」しか付いていなかった。

つまり、

  • 浴槽に水を溜めて沸かす事は出来る。
  • 蛇口から直接お湯を出す事は出来ない。

 

 

どういうことだ?

僕はすぐに担当者さんに連絡を入れた。

経緯を説明し、話が違う事を伝えた。

担当者さんは大慌てだった。

  • 「一戸建て」や「水回り」は本当に怖い。
  • オーナーは「お湯が出る。」と確実に確認を取った。
  • これは「お湯が出なかった。」では済ませられない。

担当者さんは「絶対なんとかします!」と言ってくれたので、とりあえずお任せする事にした。

 

担当者さんからの返事が来た。

オーナーも本当に「お湯が出ると思っていた」そうだ。

元々はオーナーの親の所有する物件で、最近、所有権が今のオーナーに移ったばかりで、オーナー自身が物件の把握が出来ていなかったらしい。

要するに、オーナーは騙す気が無かったとの事だ。

 

しかし、そんな事は借り手の僕には関係無い。

「浴槽は沸かせるがお湯は出ない」なんてダル過ぎる。

何より「お湯が出る」と「懸念事項」が解消されたから契約したのだ。

僕は譲る気はなかった。

そんな僕に提示された案は「家賃を下げる」と言うモノだった。

 

「お湯が出る風呂」にするには、大掛かりな工事が必要で、結構な金額がかかると。

その金額をオーナーはすぐには出せないとの事だった。

実際にその金額を聞いたけど、確かにすぐに出せる金額ではないと僕も思った。

しかし、「お湯が出ない風呂」なんてダル過ぎる。

まだ引越しもしていないのに、大きなトラブルを抱えてしまった。

選択。

僕は考えた。

部屋のクリーニングやらの件で、オーナーに対する疑念は確かにあった。

担当者さんはちゃんと「動いて」くれているし、この件は担当者さんにとっても「事故」の様なモノだろう。

こういった「外からの要因」を抜きにして、「物件そのもの」を僕はどう思っているのかを考えた。

「お湯が出ない風呂だけど、家賃が3万5千円になる」という担当者さんからの案は却下だ。

何度も言うが、お湯の出ない風呂はダル過ぎる。

しかし、「風呂のお湯の件」以外にしてみれば、僕にとっては好条件そのものだ。

仮に「風呂にお湯が出る」として、それでこの家賃なら、本当に文句の無い好物件なのだ。

それを手放したくはない。

だけど、現状はお湯が出ない風呂。

なんとか風呂にお湯が出る様に出来ないか?

 

僕は、「風呂にお湯が出る様に工事してもらえないだろうか?」と考えた。

その場合の問題点は、お金だ。

逆に言えば、お金があれば解決出来る問題なのだ。

僕は担当者さんに言った。

チッタ「家賃の値下げはいりません。僕も少し出すんで、工事してもらえませんか?」

僕は「自分もお金を払う」という選択をした。

自分の満足できる物件にする為に、投資をする選択を取った。

この選択によって、我が家の風呂はお湯が出る様になった。

本来なら無かった「外付けではないシャワー」というオプションも付いた。

安息を手に入れて。

僕は、今も住んでいるこの家にとても満足している。

正直ボロっちいし、作りもチグハグ。

だけど、「それ」だって「味」だと感じている。

この「満足感」ってのは、自分で考え、自分で決めて、自分で納得したからだと思っている。

 

風呂の件にしてみても、仮に親や他人が決めた物件だとしたら、僕もブチ切れていただろう。

僕が「ココが良い!!」と決めたから、自分でも工事費を負担する選択を取れた。

10万チョイの投資であったけど、それに見合う満足感を感じている。

 

そして何より、「僕の家族」はこの家を知らない。

家に家族が来る可能性が0という安心感。

住所は伏せてあるし、保証人も保証会社を使っている。

保証人を立てるより出費が出るが、この安息のためなら安い投資だ。

自由というものに大幅に近づくことができた。

 

以前に住んでいたアパートを、僕は「出たい出たい」と思っていた。

しかしそれは、「家族が来るかもしれない恐怖」や、「ソリのあわない不動産屋」といった外的な要因が強い。

何より、自分で決めた物件じゃないため、責任や不備に対するものが「何でこんな物件なんだよ。」と後ろ向きなモノになっていたからだろう。

自分で決めた物件なら、「もっとコウしよう!」って前向きな気持ちになれたんじゃないかと思う。

しかし、「あのアパート」は、「嫌だ嫌だ」と思う外的な要因を抜きにすれば、10年近く僕に寄り添ってくれた存在だった。

引越しの準備の際、フイに写真を撮ろうと思った。

引越しの段ボールを見ると、「あぁ、引っ越すんだな…。ココともお別れだな…。」と思った。

この部屋に対して、「今までありがとうございました。」と、心から思った。

最後に、実際に不動産トラブルにあった僕の意見を少し。

「とにかく確認」これに尽きる。

  • 不備があった場合の補償は?

担当者さんも言っていたが、「水回り」は目に見えない分、本当に怖い。

これらの不備に後から気付いた際、直してくれるのか?妥協案を提示されるのか?

確認しておいて損は無いだろう。

  • クリーニングの定義

僕は契約の際に「部屋のクリーニング代」を支払った。

だから、「見学時」よりも綺麗な状態で契約出来る物だと思っていた。

実際は、「見学前」のクリーニングであった。

「じゃあ、僕の退去時はクリーニング代要らないんですね。」とゴネてある。

  • 畳の張り替えの定義

物件案内には「畳張り替え済み」とあった。

しかし、この「畳の張り替え」には種類が色々ある。

「裏返し」「表替え」「新床」

「裏返し」は表面の「イグサ」を文字通り裏返して再利用。

「表替え」は「イグサ」を新しい物に張り替える。

「新床」は畳そのものを全取り替え。

我が家は「裏返し」だった。

だから少し汚れていたのだ。

気になる人は確認しよう!!

  • 元々あるキズなんかはないか?

退去する際に請求される場合がある。

契約したら部屋中の写真を撮りまくろう。

 

不動産の本を読んだりすると、今もまだ「ボッタクリ不動産屋」は存在する様だ。

何も、最初から喧嘩を売るつもりでかかる必要はないと思う。

実際、キズの写真がどの程度の「証拠としてのチカラ」があるのかはわからない。

「こんな話聞いたんですよ〜」程度に話しておけばいいと思う。

優良な不動産屋なら、面白い「あるあるトーク」が聞けるかもしれない。

もし、悪徳不動産屋なら、仮に定義が間違っていても「コイツ、調べる気はあるな…。」と、ヘタな手は打てないと思わせる事が出来るかもしれない。

 

いずれにしても、不動産屋やオーナーと友好な関係を結ぶに越した事はない。

「風呂の件」でのチッタの申し出に、担当者さんとオーナーはとても驚いていた。

後に担当者さんは、「怒鳴り散らされて、違約金の話が出るケース。まさか、お金を出すなんて申し出があるとは考えてもいなかったです。」

「チッタさんがお相手だったから解決出来ました。」

と、とても感謝された。

まぁ、「今後の付き合いの中で、悪い様にはされないだろう」と思っている。

 

大変な思いもしたけど、楽しかったし、満足出来る物件に住めている。

今後もこの家とは仲良く暮らしていきたい。

4 COMMENTS

しもけん

改めて読むと面白い。

やっぱり自分で考えて、自分で選択するってのが人生ではとても大事だね。
ただ、選択を取るときに、必ずリスクや責任がつきまとう。

その責任やリスクを負うのが嫌だから、他人に選択を委ねて、「自分はこうしたいんじゃない」と不満が溜まり、文句だけをぶつけてしまうんだな〜と思うよね。

自分の過去を考えてみても、この文章を読んでも改めて、自分で選択するって超大事だよなと思ったよ。

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titta31@

確かに自分で選択をすれば、リスクや責任がつきまとうね。
だけど、自分で考えて納得した上での選択をすれば、例え失敗だったとしても「やれる事はやったし、しゃーない。」って前向きな諦めが出来て、次への教訓に繋がりやすくなるよね。
上手くハマった時の喜びなんかも、他人の選択に従ってたら手に入らないモノだと思うし。
こんな素晴らしい権利を他人にくれてやるなんて勿体無いと思うわ。

返信する
エキノ

やっぱ一戸建ては良いですねぇ
アパートは隣人ガチャが怖いしこちらも気を使うし
借家だと町内会とかは無いのかしら

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titta31@

隣人ガチャも当たり引けましたよ。
町内会の事もお隣さんが教えてくれました。
「町内会とか入らなくて大丈夫だから。」って。

余談ですが、ご近所の数軒に引越し挨拶に行ったんです。
チッタさん、糖尿病を患うお隣さんにバームクーヘンを渡す痛恨のミスをした模様w

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