司令部から任務の通達が来た。
「対象」と接触し、パスワードを聞き出せ!!
やれやれ。
コッチの都合はお構いなしか…。
これだからお偉いガタは困る。
まぁ良い。
下っ端は下っ端の仕事をするさ。
20代前半の頃の話。
僕は当時、24時間営業スーパーの夜勤をしていた。
勤務が終わり、特売のキャベツを購入した。
今日のメインディッシュはキャベツ炒めだ!!
このまま帰宅し、ディナー(時刻は昼)を楽しみたいところ。
しかし、前日に通達のあった任務を片付けなければならない。
僕は、職場から直接「対象」との接触ポイントに向かう事にした。
今回の任務は、僕にとってもワクワクするものであった。
テンションは最高潮だ!!
僕の愛車「ケルベロス(ママチャリ)」に跨る。
待ってろ!!今、お前に生命を吹き込んでやる!!
気分は「ASE」のマルチドライバー。
ケルベロスを巧みに操り、向かった先は警察署。
この警察署に拘束されている「対象」からパスワードを聞き出す。
それが僕に与えられた任務である。
警察署に着いた僕は受付案内に向かう。
袋パンパンにキャベツを持った僕に、案内の人は困惑していた。
チッタ「面会希望です!!」
「キャベツを持って?」案内の人の顔はそう言っていた。
担当部署に案内された僕は、なんか色々書かされた。
氏名、生年月日、住所。
職業?そんなんも書かされるのね。ハイハイ。
面会者との関係。あー、ハイハイ。
き ょ う だ いっと。
…。
……。
兄が逮捕されましたw
ねぇねぇ、今どんな気持ち?ねぇ、ドンナキモチw
ワクワクが と ま ら な いw
遡ること数日前。
兄は、母の経営するスナックの常連客に暴行を加えたらしい。
詳しい話は別で書こうと思う。
とにかく兄は逮捕された。
母は兄の勤め先に連絡した。
兄の状況や精神状態を説明し、退職する話で進めた様だ。
そこで、兄の職場のパソコンのログインパスワードが必要になった訳だ。
母は自分で兄に聞くのが怖いらしい。
困った時のチッタ頼み。
母はエージェントチッタを警察署に派遣したのだ。
僕は面会室に通された。
あの、丸い穴の空いた壁のある部屋だ。
「うわ、すっげwホントにこんな感じなんだ!!」
中々来る機会の無い場所に、僕の胸は踊っていた。
ニーさんまだかなぁwどんな顔してるかなぁw
ひとり暮らしの僕は、久々の兄弟との再会に僕の心はカーニバルだった。
どんな顔してようかなぁw
やっぱ深妙な感じがいいかな?ダメだ。絶対笑っちゃうw
そんな事を考えていると、向こう側の扉が開いた。
ガチャ…。
チッタ「ニーs
知らないオッサンが入ってきた。
オッサン「おニーサン、会いたくないって。」
はぁ!?ふざけんな!!
何を今更ひよってんだ!!
お前が提供したネタだろ!!
最後まで楽しませろ!!!
とりあえず任務だけはこなそう。
チッタ「そうですか。じゃあすみません、兄にパスワード聞いてもらえませんか?」
オッサン「あー、そう言うのはダメなんだ。直接聞いて。」
あーもぅ、融通が効かねぇ。(イラり
チッタ「ニーさん!!パスワード!!パスワードが聞きたいんだ!!!」(大声
オッサン「そう言う意味じゃないからw」
チッタ「ニーさああぁぁぁぁん!!!」
オッサン「ハイハイ、もう終わりね。」
任務は失敗に終わった。
しかし、中々体験する事のない、貴重な体験だった。
これ職場の人からしても、すげー迷惑な話よな。自分の都合以外全部どうでも良いのな。
でしょうね。
ただまぁ、彼は精神疾患持ってるからね。
周りからすれば、「精神疾患あるから」では済まないけど、彼にとっては周りを気にする余裕なんて無かったんでしょう。
今となっては、シロウトの「お説教」なんて最悪の行動を取った2号にも非はあると思う。
結局はニーさんが悪いんだけどね。
やっぱシロウトが手ぇ出すもんじゃないわ。
拗れるだけ。